殺人が起きない異色のエピソード。津川雅彦が古畑の同級生として登場する。
古畑は、流行作家の旧友から山荘に招待される。作家は、若い妻が彼の担当編集者と浮気していることを黙認していた。古畑は彼の行動に不自然な点を見つけ、疑問を抱く。
最後まで殺人が起きない今までに無いエピソード。そのため、終盤までのストーリーは、何が起きるのかという心理的なサスペンス劇といった様相で進む。
刑事コロンボにも「さらば提督」という話題になったエピソードがある。初めて倒叙式からはなれ、最後まで犯人がわからない形式をとったからだ。
本作はそれに匹敵するような思い切った試みになっている。古畑の謎解きまでは成功しているように思う。ただ、謎解きミステリーとしては、それほどよい出来であるとは言えない。犬を使うトリックは、刑事コロンボ「攻撃命令」からかな。
劇中に最終回用だったというメッセージを入れたり、古畑に人生訓のようなものをしみじみと語らせる幕切れにしたりと、かなりの意気込みでつくられたエピソードだと感じる。とくに最後のシーンは、刑事コロンボの最高傑作と言われる「別れのワイン」を念頭において作られたのかなと思う。
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