「お葬式」「マルサの女」で知られる映画監督、伊丹十三の若き日のエッセイ集。初版は1965年。当時は俳優として活動しており、仕事で長期滞在したヨーロッパの文化、食べ物、ファッション、自動車、ホテルなどについて書いている。60年以上前の文章で時代の古さはあるが、海外旅行が一般的でなかった頃の若い日本人の目に、ヨーロッパがどう映ったのかを知れるのが面白い。
映画関係者など業界の実力者とも交流しているが、若いのに物おじせず、相手が大物でも必要以上にありがたがらない。好きなものは好き、気に入らないものは気に入らないという姿勢は、後の映画監督・伊丹十三につながるものだろう。
ブランドや名品へのこだわりも目立つ。ただ、これは裏返せば自分のアイデンティティーを確立する作業でもあったのだろう。圧倒的な歴史を持つヨーロッパの文化を肌で感じれば、こうなる理由もわかる気がする。ややこだわりが強く気むずかしそうな著者だが、ユーモアのセンスもあって楽しく読める。

