松富かおり著「エルドアンのトルコ」書評感想

国際ニュースを見ているとトルコに関する話題をよくみかける。アメリカの庇護にあるというふた昔くらい前の認識では、今のトルコを理解するのは難しい。

ニュースからは受ける印象は、

アメリカの敵なのか味方なのかよくわからない、ロシアにはけんかをしながら接近しているようだ、中国とも握手をしている、EUとは仲良くしたいようだ、中東ではイランと手を結んでいるらしい、クルド問題の当事者のひとつである、シリアには影響力が大きい、トルコリラが暴落したりする、日本とはよい関係らしいなど。

本書では、エルドアン大統領という稀代の政治家を通して今のトルコ読み解いている。

トルコの現代史の中で、なぜエルドアンのような人物が台頭してきたのか。なぜトルコが国際社会で注目される役割を持つようになったのか。これらが、トルコが建国以来の世俗主義からイスラム回帰という大きな流れの中で、変貌するトルコの舵取りをするエルドアンの半生とともに語られている。

冒頭の2016年の軍のクーデターの章は、詳細かつ緻密に分析されていて、ジャーナリストとしての著者の力量が発揮されている。

著者の旧姓は有村。TBSの記者時代に「筑紫哲也 ニュース23」のキャスターを務めていた。