NHKで年末に放送があった松田龍平主演の日中共同製作のドラマ。ほぼ全編が上海ロケで、非常に力の入った作品。
大正時代に芥川龍之介が新聞社の特派員として上海に滞在したときの手記がもとになっている。芥川の目を通して、当時の国際都市上海を物語風に仕上げたドラマ。
清朝はすでに倒れ中華民国が成立しているが、中国社会は混乱の中にある。華やかに見える上海だが、芥川が接触する人々の裏には困窮した生活がある。雑然とした喧騒の中にもそこで生きる人たちエネルギーが感じられ、当時の上海の躍動感がうまく表現されている。
やはり目につくのは色彩豊かで豪華なセット。とくに幻想的で艶やかな赤が素晴らしい。その鮮やかさと困窮を極める人たちの生活との対比が印象的だ。暗い照明が当時の中国社会の状況を暗示させる。
戦争の足音も聞こえるなか、ひとときの平和な時代。そして今の中国にとっては、アヘンや売春がはびこる建国前の時代。英雄を待望したり、共産党会議と毛沢東を次世代の救世主ともとれる中国側に配慮した場面もある。
ストーリードラマではないが、映像美を楽しめるよい作品だと思う。
スペシャルドラマ「ストレンジャー~上海の芥川龍之介~」
NHK総合
2019年12月30日 21:00〜22:13