映画「ゼロの焦点」(1961)の感想。野村芳太郎監督、松本清張原作。

野村芳太郎監督の松本清張作品と言えば「砂の器」を思い浮かべるが、これはもうひとつの名作「ゼロの焦点」を映像化した作品。

前半の北陸の寒々しい情景がよい。荒れる日本海とどんよりとした冬の天気に白黒映像はよく似合っている。主人公の新妻の不安な気持ちが映像に反映しているようだ。つかみの部分は完璧に思える。

中盤以降の崖っぷちでの謎解きは2時間ドラマを思い出してしまった。筋が少し込み入っているので、ここでの一気の種明かしは少し急ぎすぎの感じがある。しかし最後の社会派エピローグがあるのでどうにか体裁がととのった。身勝手な動機のただの殺人事件ではなく、弱い者の抱える社会の理不尽さまで描くのは、さすがに松本清張原作。