映画「早春」(1956)小津安二郎監督の感想

小津安二郎監督によるサラリーマン夫婦の日常を描いた作品。ほんわかとした雰囲気はあるが、珍しく少し緊張感のある物語。

倦怠期の夫婦の間に起きた夫の浮気。同僚のOLに誘われ、ふらふらと一夜を過ごしてしまう。妻はそれに気づき、夫婦関係はただならぬ状況をむかえる。転勤で新しい土地での生活を始めたのを機に、ふたりは和解する。

ふたりの物語と同時に、サラリーマンの悲哀も同時に描かれる。戦後の食糧難から解放された時代。会社に行けば給料は入るが、先行きの不安、単調な生活、様々な人間関係など、自由のきかない日々の暮らし。

今の時代から考えると、のどかな時代と思わせる。こわれかけた夫婦関係が、周囲からの助言と今の生活を大事という考えから、結局丸く収まってしまう。当時の世相から夫婦のあり方を描いた作品。