韓国映画「ペパーミント・キャンディー」(2000)イ・チャンドン監督の感想

「バーニング 劇場版」のイ・チャンドン監督の第2作。ソル・ギョング主演で2000年に公開された。

冒頭から自暴自棄で登場して鉄道自殺をしてしまう主人公。彼の半生を過去にに少しずつ遡るかたちでストーリーは進行する。元恋人の死、経営者時代、刑事時代、軍隊時代、そして20年前のピクニックと。過去になればなるほど、イカれた状態であった主人公の中に、徐々に生来持った純真さが見えてくる。そして、花の写真を撮ることが好きな青年が、なぜこうなってしまったかが明らかになる。

背景には韓国の激動の歴史がある。経済危機、軍事独裁、民主化運動、光州事件、北との緊張関係、大きな世の中の流れに翻弄される主人公の悲哀。「人生は美しい」という言葉がむなしく聞こえるようになる。

伏線の張り方がうまい。なぜスーツを着ているのか、足を引きずっているのか、カメラは、お祈りを嫌う主人公など、伏線を張って、時間を遡って謎をとく。手品の種明かしを見るような気分になる。

現実と折り合いをつけるというのは生きる知恵だ。誰もが経験することで、それが年齢を重ねることであり、生きていくこと。だが、失ってしまうものも多い。ほとんどの人がそこに目をつぶってしまう。イ・チャンドン監督はあえてそこに焦点をあてて、韓国の現代史を持ってきて際立たせる。いつもながらの激しい手法だ。

外野から見れば主人公はとても運の悪い人ですまされるかもしれない。しかし、韓国の人が見れば、実体験と重ねることでリアルなストーリーになるのだろう。