映画「斬る」(1968)の感想。仲代達矢主演、岡本喜八監督。

同名の映画に市川雷蔵主演のものもあるが、これは仲代達矢主演、岡本喜八監督の1968年公開の作品。

時代は天保年間。ある藩の悪徳家老が不満分子を利用して城代家老を暗殺させる。更に、浪人軍団を組織して、その分子たちも粛清して藩の実権を握ろうとする。その内紛に風来坊の浪人と相棒が加わる。

黒澤明の「用心棒」のような映画。話が重層的で、ただの勧善懲悪の物語で終わっていない。不満分子、浪人軍団、悪徳家老、そして主人公の浪人と相棒の4つのグループのそれぞれのストーリーが並行して進行する。

浪人仲代達矢の活躍にコメディタッチの演技もいいし、家老神山繁の腹黒さはいつも通り。高橋悦史、岸田森もいい。

背景には、身分制度の中での武士への批判が見え隠れする。侍の矜持などど格好いいことを言っていても、特権階級であることを利用して、理不尽な行いをしているだけ。それでも武士に憧れる人もいるという矛盾した社会の仕組み。

飽きさせない工夫が随所に入っていて、最初から最後まで楽しめる時代劇。