映画「7月4日に生まれて」(1989)の感想。トム・クルーズ主演。

トム・クルーズがベトナム帰還兵を演じる。オリバー・ストーン監督作品。

愛国心厚い主人公は、海兵隊に志願しベトナム戦争に従軍する。戦地で戦友を誤射により殺してしまい心に傷を負う。また、自身も負傷により半身不随となって帰国する。しかし、戦争反対の世相に直面し、いたたまれない気持ちになる。

戦争の悲惨さ、無意味さを伝える反戦映画としては成功していると思う。ただ、作品としては、いまいち感がある。

タイトルが示唆するように、ヒーロー誕生から紆余曲折を経て成功するという英雄物語の形式をとっている。ハッピーエンドで終わる話なら、一本道の陳腐な場面でも爽快感を持って見ることができるが、この映画はワクワク感を楽しむものではない。ベルトコンベア方式に繰り出されれる主人公の立ちなおりの過程が、とってつけたような話にしか見えなくなっている。

トム・クルーズひとりの映画としたところもマイナス。若さと勢いでつくったトップガンに比べると、演技力が際立っている。だが、他の登場人物との関係描写が深くは突っ込まれておらず、断片的な話の連続という印象を受けてしまう。やはり、これだけ重いテーマをひとりの人物だけで描くのは難しいだろう。

迫力ある映画だと思うが、実話の持つリアリティを生かし切っていない感じがする。