映画「上意討ち 拝領妻始末」(1967)の感想。

原作は滝口康彦の「拝領妻始末」。三船敏郎主演の時代劇。

主人公の馬廻り役を三船敏郎が演じる。ある日、長男の嫁に藩主の側室を拝領しろという命を受ける。理不尽な要求に憤慨するが、長男は承知して、二人で幸せな家庭を築くようになる。そこに再び世継ぎの問題が起き、妻を城に戻せという命が届く。

封建社会の理不尽さをベースにしたストーリー。主人公は剣豪であるが平和な時代にそれを活かす場がない。婿養子という立場もあり、耐えるだけの生活を送っている。そこに藩主からの度重なる強引な命令。さすがに堪忍袋の緒が切れる。だが、一家で刃向かったところで顛末は見えている。

剣豪三船敏郎の爽快な立ち回りはないので、単純に観ればエンタメ的な面白さはない。だが、そういったことを許さない体制の重苦しさが全編にわたって表現されている。盤石の封建制のおかげで戦国時代のような殺し合いがなくなり、誰もが安心して暮らせるようになった。しかし、その重苦しさは個人の生活まで押さえつけるという面をあわせ持つ。

現代にも通じるテーマをうまく取り込んだ時代劇だと思う。