著者は韓国研究の第一人者。自身の半生を振り返って、研究者として歩んだ30年を振り返る。
前半は、どのように韓国に関心を持つようになったかと駆け出し時代の悪戦苦闘の記録。あらゆるつてを頼って、研究者としての足場をつくるために苦労した体験が語られる。今とは時代が違うのだろうが、隣国の研究をするための道筋が未整備だった頃の苦労がしのばれる。
そして後半は、韓国研究者としての苦悩が語られる。この厄介な隣国を研究していくと、学説の相違といった問題だけでなく、どうしても政治的立場の違い影響を受けてしまう。この分野の重鎮になると、現政権との関係も取りざたされるくらいホットな立場に置かれる研究領域。
この時代は韓国発展の現代史とオーバーラップしていて、著者個人の記録としてだけでなく、リアルに体験した韓国の現代史としても読むことができ興味深い。
とくに大きく変わったのは、いろんな分野で日本の韓国への関心が高まったことで、それが日韓関係にも影響を与え、ますます複雑さを増していると思う。それが著者の研究活動からも読み取れる。
ちょっと変わった切り口から韓国現代史を見ることができる良書だと思う。