福原直樹著「黒いスイス」の感想。

国をイメージで語るとき、スイスは間違いなく好感度トップグループに属するだろう。北欧諸国とともに高い生活水準と紛争の影のない平和なイメージで、ユートピアのように感じる国だ。本書では、そういったスイスのイメージを覆すようなトピックスが並び、裏の顔が記されている。

ドイツやフランス、イタリアという大国に隣接し、激動のヨーロッパ史の中で国を保つのは、一筋縄ではいかないことは想像できる。通常軍備だけでなく、核保有の準備をするのは当然の成り行きだ。

民族問題の噴出するヨーロッパで、人道的理由で難民たちを受け入れ続ければ国家の破綻するのは目に見えている。冷徹な判断のもとにユダヤ人やロマの人々に対する容赦ない対応をせざるを得ない。ときにはナチスと協力することも厭わない。

金融を国家の産業の柱にすれば、悪い金が流れ込むのも受け入れなければならない。マネーロンダリングと金融業の繁栄は表裏の関係でもある。

決してスイスが悪い国ではないし、どの国にも裏の面がある。国家の運営は簡単なことではなく、きれいごとだけでは解決できない問題があるものだ。他国を一面的な見方で判断するのは危険だということを改めて感じさせる本だ。