著者は元ロシア公使、元ウズベキスタン・タジキスタン全権大使をつとめた外交官。最近のウクライナ侵攻を含めて、ロシアの政治、経済、歴史、社会、民族について読み解いた本。
歴史を振り返れば、ロシアが欧米の列強と覇権を競って数々の戦争の当事者であったのは事実。それでも、今だに遅れた国と見られるのはなぜかという疑問に、それぞれの分野からヒントを与えてくれる。
ルネッサンスや宗教改革、産業革命を経験していないことや、長年にわたる農奴制による人権軽視の素地が色濃く残っている。
専制君主が君臨し続けるのは、そうしないと国民が言うことを聞かないため。どうしても強力な権力者が必要という背景がある。
法による秩序を守る西側先進国の視点では、グダグダ国家で付き合いにくい相手に見えるが、彼らには彼らなりの信頼関係を重んじる文化がある。安部元総理がよい関係を維持できたのは、そのあたりをうまく飲み込んでいたのだろう。
ウクライナ侵攻後のロシアのこれからについては、かなり悲観的な見方が示されている。まさにジリ貧ロシアのように見える。
ロシアという国を知るためのガイドになるよい本だと思う。