NHKスペシャル「開戦 太平洋戦争〜日中米英 知られざる攻防〜」の感想。

蒋介石が残した日記をもとに、日中戦争での中国の外交戦略に焦点をしぼって、太平洋戦争開戦までの日中米英の攻防を描いた番組。

日中戦争で、まともに日本軍と戦っては勝ち目のないと思っていた蒋介石は、米英に対日参戦の工作を仕掛ける。

他国のために軍隊を出すのは今も昔も簡単なことではない。当然、米英は動こうとはしない。蒋介石は、あらゆる機会を使って工作を続ける一方で、日本に対し停戦の交渉も同時に行う。

一方の日本は、前に進むだけで、和平撤兵のチャンスをことごとく逃す。そして、仏印への侵攻により米英の参戦を招いてしまう。その裏にドイツ勝利後のアジアでの覇権確保というシナリオがあり、日本軍が的外れな戦略を立てていたことが明かされる。

結果的に、米英は対日参戦することになり、蒋介石の思惑通りになった。

蒋介石というと、毛沢東に敗れた国民党のトップということくらいのイメージしかなかったが、相当にやり手の戦略家だったことがわかった。カイロ会談で、チャーチルとルーズベルトと並んだ写真が教科書などに載っているが、当時の中国の国力を考えれば、これも彼の手腕のあらわれなのかもしれない。

興味深い内容で、大変よくできた番組。毎年この時期には、戦争関連の番組がよく放送されるが、その中でも秀逸なドキュメンタリーになると思う。

NHK総合
NHKスペシャル

「開戦 太平洋戦争〜日中米英 知られざる攻防〜」
2021年8月15日 21:00-22:00