ジョン・ル・カレ著「スマイリーと仲間たち」の感想。

ジョン・ル・カレのスマイリー三部作の三作目になる。

パリの場末のバス停で始まる冒頭。ただのおばさんに見えた老女が亡命者で、東側から厳しく監視されている人物であることがわかってくる。家族への危害をちらつかせる東側のスパイ。彼女が将軍という名を持つ人物に助けを求めるとことから事件が始まる。

最初から冷戦時代のスパイ戦に引き込まれる。読みにくいのはいつもどおりだが、そこがジョン・ル・カレ作品の醍醐味でもある。時間をかけてじっくりと読めば読むほど、重厚な雰囲気を感じられるようになる。会話も意味深なものばかり。果たして何を言っているのかを読み解くのも楽しい。

もちろん派手なアクションなどはない。殺人は起きるが、あくまでも抑制的なトーンで物語は進む。それだけに冷たい諜報戦の様相が際立ってくる。そしてカーラとの最終対決。これもこのシリーズらしい終わり方だ。

時間があるときのじっくり読むならうってつけの作品。読み終わるのがもったいなくなる。