ジョン・ル・カレ著「ナイロビの蜂」の感想。

アフリカを舞台に製薬業界の闇を題材にしたサスペンス。スマイリーシリーズと比べると、だいぶ読みやすい。

ケニア駐在のイギリス人外交官の妻が出先で惨殺される。夫のジャスティンは、その真相を探ろうと自ら捜査に乗り出す。すると今まで知らなかった妻の活動家としての行動がわかってくる。製薬会社がアフリカで行っている治験と称する非人道的な行為を告発しようとしていたのだ。

世の中の巨悪を扱った作品は多い。壮大なスケールで話を展開できるからだ。本作は、さすがにジョン・ル・カレだと思わせる出来に仕上がっている。薄皮を一枚ずつはがすように徐々に明らかになる事実。真相が明らかになった途端に陳腐な話になることはなく、最後まで巨悪の不気味さを保っている。そこに登場人物たちの恋愛関係という人間模様が加わる。そして最後の幕引きでは、事件の公式発表とそれについての報道が淡々と羅列される。何とも絶望的な結末だ。

悪人が一人で悪事を働いているならそれを排除すればよい。しかし、世の中のシステムの中に根を張っていて、とくにそれが権力側に入り込んでいる場合は、一筋縄では解決できない。先進国の豊かさ恩恵の陰で搾取される人たちがいるという事実。複雑な現代社会の負の面を見せられと、どうしようない無力感を感じてしまう。