乾くるみ著「イニシエーション・ラブ」の感想。(ネタバレ)。読者への挑戦状。

ちょっと変わったミステリー。最後から2行目に核心を突くセリフが飛び出す。

合コンの席で知り合った若いふたり。次第に距離を狭めていって、カップルになる。しかし、彼の方が東京転勤となり、次第に疎遠になっていく。

字面を読んでいくだけでは、ただの恋愛小説。事件は起こらないし、探偵役も登場しない。若い男女の出会いと別れの物語。

だが、裏には著者のトリックが隠されている。このトリックはかなり凝っていて、精緻な構成をもとに仕組まれている。ただ、「アクロイド殺し」のように何度も使うわけにはいかない種類のものだが。

もとになる恋愛物語がやや単調で、最後まで読むが退屈なのが難点かな。読者への挑戦状といった小説なので、最初からミステリーの謎解きとして読めば楽しめる作品。