かなりトリッキーなミステリー。謎解きだけにたよるのではなく、全体の構成を挑戦的なフォーマットでつくってしまった作品。
一言で言えば、風が吹けば桶屋が儲かる的な因果律を使って物語を作っている。まったく関係のない出来事が、回り回って他の出来事に大きな影響を与えてしまうというもの。一つの些細な出来事が大事件を誘発するという話はよくあるが、本作ではこれがいくつも絡み合って全体のストーリーとなっている。
起きた出来事だけ見れば単なる殺人事件だが、読み解いていくと関係者の思惑が複雑に積み重なって、大事件に発展している。ミステリーとしてはうまくいっていると思う。ただ、記憶喪失と雷の使い方は、やはり都合がよすぎるという感じを受ける。
一方で、こういった欠点をなくして完成度を高めても、作品としてよくなるかと言えばちょっと疑問符がつく。何でもありのフィクションの世界で、こうした構成で完璧にしても、作りすぎという印象を持たれてしまうのではないかな。後出しジャンケンのように。