渡辺靖著「アメリカとは何か」書評感想。今のアメリカを知るための好著。

「何故、トランプは不死身なのか?」という帯の文句を切り口にして、アメリカ政治の現状を解説した本。

今のアメリカ政治をひとことで言うと複雑。赤か青かで色分けできた時代は、はるか昔に過ぎ去ってしまっている。

本文中に、現在の政治的対場を概略化した図が引用されているが、その図自体がすぐには頭に入ってこない。リバタリアンひとつをとってみても、どういう主張の人たちかがわかりにくい。政治のキーパーソンたちを図のどの位置に置くべきかも、かなりアメリカ政治に通じていなければ簡単ではないだろう。

それだけアメリカ社会の分断が進んで、複雑化しているということだと思う。本書では、建国以来のアメリカの政治思想の推移が概説してあって、現在までの流れがわかりやすく把握できるようになっている。

とくに保守勢力については、2000年代のブッシュ政権の頃に比べても、様相が大きく変わってしまっている。そこにトランプ人気を支える確固たる地盤があることが解説してあって興味深い。

分裂、過激、不寛容の時代になり、内政問題で苦慮するアメリカにとって、ここで中国の台頭と対峙することになったのは、何と巡り合わせの悪いことかと思う。アメリカ内の問題は、もはや国際問題でもある。

アメリカの国際的影響力の低下はよく言われることだが、その原因とも言うべき内政に深く切り込んだ本。今現在のアメリカを知るうえでよいガイドになると思う。