映画「バリー・リンドン」(1975)の感想。スタンリー・キューブリック監督作品。

スタンリー・キューブリック監督作品。ライアン・オニール主演。

時代は18世紀。アイルランド人青年バリー・リンドンは、野心を持って生まれ故郷を出る。まず、富と権力をつかむために軍隊に身を投じる。実績をあげて昇進し、ある貴族夫人と知り合いになる。そして彼女との恋愛関係から、上流階級に入るきっかけをつかむ。

こういったストーリーは、英雄の一代記になるか、何かしらの普遍的なテーマを主人公に担わせて話が進むことが多い。だが、この作品は少し違う。

主人公はそれなりの才覚でのし上がるが、運にめぐまれてうまくいってしまったところが多分にある。何より、感情移入できる魅力を持った英雄的人物ではない。敢えてあげれば、彼の持つ野心がテーマとも言えなくはないが、単なる成り上がり根性以上のものは見えてこない。

この映画で感じるのは、時間の流れであり、歴史の中では人間の存在など取るに足らないものだということだ。

たかだか50年くらいの人の一生のスパンで、歴史の大きな流れを描くのはなかなか難しいと思う。それをキューブリック監督は、精緻な衣装や舞台背景を使うことで表現している。

名画を見るような美しさと歴史な流れの壮大さが画面いっぱいに展開される。さすがに鬼才キューブリック監督の作品だと思う。