1960年のフランス映画。ジャンリュック・ゴダール監督、ジャンポール・ベルモンド主演。
ベルモント演じる主人公は、自由奔放の生き方をしている。ある日、マルセイユで自動車を盗み、追ってくる警察官を射殺してしまう。パリに流れ着いてからは、ガールフレンドと行動を共にする。
自由を求める若い主人公。束縛を嫌い気持ちのおもむくままに行動する。枠にはめるような世の中の決まりごとは意に介さない。自動車を盗むことにためらいなどなく、殺人さえも何とも思わない。罪を犯すことで感じる罪悪感という束縛からも解き放たれている。
ガールフレンドに対しても同じだ。互いに惹かれあっていながら、別の相手とも付きあうし、同様の振る舞いをする彼女にも寛容だ。
自由を求める2人を描いているが、何よりもこの映画自体がそれまでのしきたりにとらわれない自由な作品になっている。ハリウッドをはじめとする映画では、出来事があってそれに対応する人の行動を積み重ねたパターンでストーリーがつくられる。つまり出来事に束縛され、それに反応する人間の反応にも束縛されている。しかし、この映画にはそのパターンはない。
自動車が盗まれれば事件であり、殺人が起きれば大事件であるのが普通だ。しかし、ここでは主人公の自由な行動の一場面であるだけ。もちろん、警察の捜査は始まるが、それは付随的なものでしかない。
一緒に警察から逃げようという彼の誘いを、ガールフレンドは警察への通報というかたちで拒む。束縛に対する拒否というもっともらしい理由づけもできるだろう。この作品の成り立ちを考えれば、そこまでするのかという彼女への問いは、野暮な質問でしかない。
予定調和のストーリーや構成ではなく、若者の生き生きとした日常を撮ることで映画にしてしまった驚きの作品。