映画「飢餓海峡」(1965)の感想。水上勉原作の傑作。

水上勉原作の推理小説を映画化。

昭和22年に青函連絡船が沈没する事故が発生した。被害者の中から、身元不明の2体の遺体が発見される。捜査を進めると、岩内で起きた大火と強盗事件に関係する男たちではないかとの疑いがでる。

世の中全体が貧困にあえぐ戦後の混乱期。誰もが生活の苦しさを抱えて、食べるために四苦八苦している。そういう状況下で起きた殺人事件が起点として、登場人物たちの苦闘が描かれる。

誰もが必死だ。主人公三國連太郎は、殺人まで犯してのし上がり、経営者として成功する。娼婦の左幸子は、薄幸の身の上ながら、親兄弟のために明るく懸命にお金を貯める。伴淳三郎演じる刑事でさえ、子供に満足に食べさせることができない家計だが、捜査に執念を燃やす。

貧乏という生きるためのギリギリの状況であっても、金銭欲、親子の情、仕事への執念など、人間の持つ根源的な業から離れられない。そこが描写の主軸となっている。

ミステリーとしてもおもしろいが、こういった濃厚な人間ドラマが盛り込んであることで、作品としての完成度が格段にあがっている。傑作だと思う。