
「男の首」と「黄色い犬」の二編収録。どちらも秀作だと思う。
「男の首」は、メグレが冤罪の疑いのある死刑囚を脱獄させ真相を探ろうとする。大博打になるが、思うように犯人に手がかりがつかめず、上層部からの矢の催促を受ける。だが、地道に捜査を進めると、事件の全貌が徐々に見えてくる。この物語では、やはり犯人の人物造形が秀逸。ただの犯罪者ではなく、人間としての苦悩を引き出すところまで描いている。
「黄色い犬」は酒場で起きた発砲が発端。単純な事件かと思われたが、連続事件となり謎を深めていく。少ない登場人物だが、過去のつながりがだんだんとわかってきて、思わぬ方向に展開する。黄色い犬が鍵になる。
どちらも雰囲気が最高。パリの酒場で煙草をふかしながらグラスを傾けるメグレの姿が思い浮かぶ。どっしりと腰をおろし、周りに重厚な存在感を示す雰囲気がよく伝わってくる。



