言わずと知れた溝口健二監督による名作。ヴェネツィア国際映画祭の銀獅子賞を受賞。
人の欲望を風刺した物語。ストーリーがわかりやすく、欲におぼれてはダメだという教訓が誰にでもわかるような構成だ。一旗揚げようとする夫たちと地道な生活さえ送れればよいと思う妻たち。その対比があざやかで、序盤から夫たちの転落する姿を誰もが予想することできる。戦国時代という設定も、余計な装飾がないので目を奪われるものもなく、画面に集中させてくれる。更に、東西を問わずこういった話に不可欠なホラーの色彩も取り入れて厚みを持たせている。
海外で受けたのは、やはり日本的な雰囲気があふれている点が評価されたのだろう。掘っ立て小屋に住む家族の暮らしぶりと、市場の賑わい、高貴な女怪のきらびやかさは、まさに日本の風俗の原風景といった感じがする。それらがモノクロ画面に、さっぱりとした感じで映し出される。



