映画「現金に体を張れ」(1956)の感想。スタンリー・キューブリック監督作品。

スタンリー・キューブリック監督のモノクロ映画。

刑務所を出所したばかりの前科者をリーダーにして結成されたチーム。大胆にも開催中の競馬場で売上金の強奪を謀る。完璧な計画に思えたが、思いもしない展開に陥る。

前半は、セリフの多さが目立つ。サスペンスものでは、描かないで描くといった手法で緊迫感を出す作品が多いが、この映画は正反対。ノンストップのセリフによって、悪だくみを小出しに説明しながら臨場感を盛り上げる。これが思いのほかうまくハマっている。

後半は、計画の実行をセリフを抑えて描写する。予定通りにいかない場面が次々にあらわれ、それがハラハラ感を誘う。主犯の男がどんどん追い込まれ、最後はなんという運の悪さ。

チームのメンバーたちもただの悪役という描かれ方ではなく、裏では夫婦関係や家族の問題を抱える小市民的な顔も同時に出すところもうまい。

シンプルなストーリーだが、非常に練られた作り。さすがにキューブリック監督。