映画「太陽の季節」(1956)の感想。石原慎太郎の芥川賞受賞作。

原作は石原慎太郎の芥川賞受賞作。石原裕次郎も脇役で出演していて、尋常でないオーラを放っている。

「太陽族」という言葉とともに、当時話題になった若者たちを描写した作品。主人公たちよりも上の世代はリアルに戦争を体験しているので、無軌道にみえる若い連中の行動は、さぞかし奇異にみえたと思う。虚無的な考えと若さのエネルギーがまじりあい、自堕落ともみえる行動に走る理解不能の世代が出現したと。世間から大げさに取り上げられたのもよくわかる。

裕福なボンボンたちの優雅な日常。洒落たセリフまわしにヨットとボクシングという設定。とにかくわけのわからない格好良さを引き立てる舞台装置がそろっている。今みても時代に押し出された勢いを強く感じるが、ただの無鉄砲な若者たちとしかみえないところもある。

この映画は、時代背景を考えないと、退廃的で薄っぺらいものにしかみえなくなるかもしれない。戦前戦中の抑圧された雰囲気と戦後の貧しさの次に出現し、後に続く社会に目を向ける学生運動の世代までの文化であることを。

原作の力がありすぎて、映画としての出来がどうこうではなくなっている作品だ。