映画「殺人狂時代」(1967)の感想。岡本喜八監督、仲代達矢主演。

1967年公開のコメディ映画。原作は都筑道夫「飢えた遺産」。岡本喜八監督、仲代達矢主演。

大日本人口調節審議会という得体の知れない団体が殺人を行っていく。大学講師がその陰謀に巻き込まれ、団体との対決することになる。元ナチスの将校や謎の女なども絡んで、展開が読めないストーリーが進んでいく。

めちゃくちゃな展開でカルト的とも言えるが、もちろんこの作品は反戦映画だ。正体不明の組織が殺人を行っていく様子は理不尽そのものだが、もし組織を政党、政府、軍隊などと読みかえると、その恐ろしさがわかる。組織の論理で殺人を合法的なものと見なすのは、まさに戦時下の状況だ。主人公の大学講師は、当初時代ボケのような風貌であったが、組織と対決するうちに徐々に覚醒していくのもそのあらわれだ。

一方でスパイ活劇のような要素も加わっていて、エンタメとしても面白い。天本英世の役どころは死神博士を彷彿させていい味を出している。旧制高校じこみのドイツ語をたっぷりと披露している。仲代達矢のヨレヨレの怪演も、もちろんいい。