映画「手紙は憶えている」(2015)の感想。

2015年製作のカナダ・ドイツ映画。認知症のアウシュヴィッツ収容所の生存者が同じ境遇の老人に操られて、収容所時代のナチス兵士に復讐をするサスペンスストーリー。

見終わっから振り返ると、クライマックスに重点を置いた脚本になっていて、それまでのストーリーの起伏はそのための序曲のような位置づけになっている。ただ、途中の記憶をなくしつつある老人の旅はなかなかスリリングだ。

記憶が薄れていく認知症の主人公は、アウシュヴィッツ収容所の悲劇でさえ時間の経過とともに歴史の中に埋もれていくたとえになっているのかなと漠然と思いながら観ていた。ところが、ネオナチ男の登場となり、ユダヤ人問題は今の社会にも厳然と存在する問題でもあることを再認識させられる展開になる。

そして最後は悲劇的な終わり方は、かなり重い感じにさせられる。

サスペンスとしてよくできていると思うし、展開に唐突感があるところが作品に重みを持たせている。

主人公を操った老人マックスは、スパイ大作戦で変装名人だったマーティン・ランドー。いまだにアクの強い演技は健在だ。