映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」(2020)の感想。

1969年5月13日に東大駒場キャンパスで行われた三島由紀夫と東大全共闘との討論会のドキュメンタリー映画。

学生運動が華やかな頃、三島由紀夫が東大を訪れて学生と討論を行ったことは知っていたが、詳しい内容についてはこの映画で初めて知った。互いにかなり極端な考え方を持っているので、不穏な雰囲気の中で激しいののしり合いが展開されたのではと思ってしまうが、実際は違っている。抑制されたトーンで、相手の考えを真摯に聞き議論を進めるという大人の討論だ。

極右と極左のように極端な思想どうしは、意外にも話が合うと言われる。この討論会でも、両者の立場は正反対だが、言っていることには共通点があって、話がかみ合っている。双方にとっては、中道右派とか中道左派とかいう人々が、中途半端で攻撃の対象になるのだろう。

とにかく三島由紀夫の冷静さが目立つ。そういう彼が起こした後の市ヶ谷での事件は、単なる激情の末の出来事として片付けてよいのかと思ってしまう。