映画「柔らかい肌」(1964)の感想。フランソワ・トリュフォー監督。

1964年公開のフランス映画。フランソワ・トリュフォー監督。

主人公の中年男性は、評論家でマスコミに取り上げられるほどの有名人。ある日、飛行機の客室乗務員に一目惚れし、策を弄して近づき恋仲になる。彼女を連れて講演旅行に出かけるが、妻に浮気を悟られてしまう。そして恋人との仲にもすきま風が吹き始める。

不倫劇を通して、恋愛の本質的なところを意地悪なくらいにえぐり出している。主人公を若い二人にすれば、淡い恋の物語と言える部分もあったろうが、中年男ではそれもない。助平心から若い女性を射止めて離そうとしない姿は滑稽だ。当然、上手くいかなくなり、連れ添った妻をあっさり捨てて、恋人と結婚しようとする。まったく浅はかな考えに陥っているのに、自分では気がつかない。

相手の女性を、若くてきれいなだけで、内面の人間性まで描かなかったところに、監督のうまさがある。そのため男の軽薄さが一層目立ってしまう。

最後の過激なシーンは、まさに公開処刑の様相を呈している。これまで監督に散々にいたぶられた中年男は、容赦ない最期をとげる。色恋というものは、こういう怖いところもあるという冷静な分析だ。