1960年公開の大映ヤクザ映画。三島由紀夫が主演、若尾文子が相手役。監督は増村保造。
俳優三島由紀夫の初主演作になる。大映の看板女優である若尾文子との共演であり、当時35才の三島が作家としてどれほどの扱われ方をしていたかがわかる。すでの若き文豪の地位を確立していたのだろう。
ストーリーはヤクザの抗争。チンピラの喧嘩程度の争いなので、とくに目立った面白さはない。もちろん三島由紀夫を見るための作品であり、ほとんど画面に出ずっぱりなことからもそれがわかる。
頑張ってはいるが、やはり素人演技であることは一目瞭然。周りをうまい俳優たちでかためているので、大根ぶりが更にめだってしまっている。だが、古畑任三郎のイチローやシベリア超特急の水野晴郎と比べれば、自分のキャラに合わないヤクザをかなりいい線で演じていると思う。小柄な体格と鍛え上げたムキムキの胸板とのギャップが目に入り、外見に三島の妙なリアル感が出ているのはご愛嬌だ。
コアな三島由紀夫ファンにはおすすめの映画だと思う。