映画「市民ケーン」(1941)の感想。オーソン・ウェルズ主演・脚本・監督作品。

オーソン・ウェルズ主演・脚本・監督作品で、オールタイムランキングで1位になるくらい名作として名高い作品。

新聞王ケーンは「バラのつぼみ」と言う言葉を残し死んだ。その秘密を解き明かすために、新聞記者が関係者を取材し、その証言から彼の人生を描き出す。

大富豪であり社会的には成功者である主人公が、恵まれない家庭生活を送り、満たされない気持ちを抱えながら、人生を終えるという物語だ。ありふれたストーリーであるが、この映画ではそれだけでは終わらない。

とにかく最後まで息を抜く暇がないような構成になっている。

冒頭に不遇な死を遂げた富豪の臨終の場面を持ってくる。そこから最後の言葉「バラのつぼみ」の謎解きの旅をスタートさせる。前半は、新聞記者が手がかりを求め歩き回る過程で、その中に過去の場面を次々に入れる。どのシーンも短いので、そのつながりに注意を払わざるをえない。後半は、長めのシーンが続くが、肝心の「バラのつぼみ」の意味が明らかになっていないので、否が応でも画面に集中させられる。

いつの間にかケーンの一生につきあわされるような仕掛けは、さすがと感じる。

「バラのつぼみ」は何かという問い。主人公ケーンは富豪であっても、母の愛情を求める気持ちは市民と同じ。だが、映画にすればやはり劇的な人生だという、パラドックス的なところを示している。

制作年代を考えれば、やはり一度は観ておきたい映画だ。