映画「欲望のあいまいな対象」(1977)の感想。

ルイス・ブニュエル監督の遺作。1977年フランススペイン合作映画。

ブルジョワの老紳士マチューは、新しい小間使いコンチータの虜になる。何とかものにしようとするが、彼女の気まぐれな態度に翻弄される。

二人一役というトリッキーな設定。コンチータは、キャロル・ブーケとアンヘラ・モリーナの二人の女優が演じる。ブーケは理知的で男を寄せつけないタイプ。一方、モリーナは肉感的で扱いやすい。マチューはもともと関係を迫るだけの下心しかないので、モリーナの態度に期待を持たされブーケの塩対応でガックリを繰り返す。

しかしマチューは徐々に学習をしていく。ブーケの欲しいものは何かについて理解するようになると、今度はモリーナの小悪魔的な態度が目につくようになる。

冒頭の女に水を掛けるシーンは導入としては最高。そして列車のコンパートメントで、乗り合わせた乗客に顛末を語り始める。話す内容はどう見ても下世話な痴話話だし、それだから興味をそそられる。三面記事を得意気に話す老紳士マチューの姿は滑稽だ。

男女の愛と欲望という普遍的なテーマをコメディタッチで描いた秀作かな。