スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演。1960年に起きたU-2撃墜事件をもとにした、米ソの諜報活動をめぐる争いを描いた作品。
トム・ハンクス演じる熱血弁護士は、ソ連のスパイの弁護を担当することになった。同時期に米軍の偵察機が撃墜され、パイロットがソ連の捕虜となる。米ソ双方の思惑から、スパイとパイロットの交換交渉が行われることになる。民間人である主人公の弁護士が、その交渉役を任される。
冷戦期の東ベルリンでの、米ソ間の息詰まる交渉劇。そこに東ドイツまで絡む。スパイ映画としては、ぞくぞくするような設定だ。
しかし、テイストは古典的な冷戦スパイ・スリラーの手法とは少し違っていて、ハリウッド的エンターテインメント作品の色合いが濃い。構成も巧みだし描き方もうまい。なによりも面白い。さすがにスピルバーグ。トム・ハンクスにフォーカスが当たり、抜群の演技を見せる。
ただ、描き過ぎという感じがしないでもない。描かれない部分から受ける恐怖感が少しもの足りない気がする。鉄のカーテンの向こうの未知のものに対する寒々しさのようなもの。ジョン・ル・カレの「寒い国から帰ったスパイ」の雰囲気まではないかな。でもよくできていて面白い作品だ。よくもわるくもスピルバーグとトム・ハンクスの映画。