小針進、大貫智子著「日韓の未来図 文化への熱狂と外交の溝 」の感想。

研究者とジャーナリストによる日韓の文化交流についての共著本。

冬のソナタで始まった韓流ブームは20年以上も前のこと。今では様々な分野に広がっていって、もう単なるブームとは言えないくらいの人気を保ち続けている。日々のニュースを見ていれば、冬ソナ、BTS、愛の不時着ぐらいは情報として入ってくる。しかし、意識的に追っていないと大まかな流れすら理解できないくらい韓国のエンタメは日本に入ってきている。韓国側でも日本文化の開放が進んでいて、日韓の文化交流はこの20年で加速度的に進んだ。そのあたりの交流の歴史に沿った議論が展開されていて、日韓文化交流史の概観を知るにも有用な内容だと思う。

文化交流が日韓の関係を改善するのかという問いに対しての様々な分析が行われている。交流が直接外交関係の改善に寄与するわけではないが、バックグラウンドとして大きな影響があるあたりが妥当な結論かなと予想して読み進めたが、だいたいそんなところになると思う。注目すべきは、世代間で意見の相違が大きいこと。一旦、相手国に悪感情を持ってしまうと、それを解消するのは簡単ではない。一時的な外交問題の悪化が交流関係全体に影響を与えるのとは別に、根強い好悪の感情が両国関係の基盤になるので、世代による考え方の違いは興味深いデータとして見た。