加藤一二三著「鬼才伝説」の感想書評

加藤一二三九段による自身の将棋人生と対戦した将棋界の鬼才たちの将棋感などをまとめた本。

トップ棋士を一般の人が論評すれば、将棋の天才たちで終わってしまう。その天才たちは相手をどう見ているのかはたいへん興味深い。

著者自身が将棋界きっての鬼才加藤九段から見た棋士たちは、

大山
意地や気合いで指している。答えは出ないと思っている。
升田
学究派、突き詰めていくと答えが出る。
中原
作戦のうまさに惚れ込む。
米長
我慢強い。将棋は研究派、言動は勝負師タイプ。相手の意表を突くことが次々と頭に浮かんでくる。将棋は考えれば答えがでるというタイプ。
谷川
老練さを感じる。読むスピードが速い。ある種の「導き」を意識している。「将棋の神様」という言葉を使う。
羽生
研究派。駒のやりとりが長く続くのが好き、互角であればよい、五分五分なら打って出てそれを楽しむ。王道よりも覇者タイプ。
渡辺
将棋をよく研究している、作戦家。新しい形の勝負師。
藤井
秀才型の天才、欠点がない。

年齢差のせいか、先輩の升田、大山には教えを請うような見方、同輩の中原、米長には激闘から感じた印象、後輩の谷川、羽生には割と公平な評価といったところ。対戦が少ない若手の渡辺、藤井にはかなり応援メッセージ的な感想。

見方も独特だし、流れるように出てくる過去の記憶。将棋、信仰、音楽に生きる天才加藤一二三九段の面目躍如の本。