柯隆著「中国不動産バブル」の感想。

テレビ、ラジオでお馴染みの中国経済の専門家柯隆氏による中国不動産バブルについての解説本。

前半は、中国不動産バブルの詳細な解説。なぜ、バブルが起きて崩壊の危機に瀕しているのかが詳しく述べられている。日本のバブルとの比較しての中国特有の事情についての解説もわかりやすい。

後半は、中国人の考え方とメンタリティ、それに習近平体制の問題点について。とくに長いスパンで見たときの共産党体制の持つ課題があぶり出されている。

この本を読む限りでは、共産主義と資本主義のいいとこ取りをして発展してきた中国だが、そのジレンマに陥る時期に来たようにも思える。市場主義はすなわち思想の野放しにもつながり、体制の根幹を揺るがしかねない。市場はすべての人にとって平等であるはずだが、それをコントロールする共産党幹部たちの存在が必要なことが、まさに汚職の原因となっているのもつらいところだ。もちろん、これだけの人口を抱える国内を統制するためには、強権体制が必要であるという大国ならではの事情が根本にはある。

著者の分析はいつも的確で現在の中国を知るための情報源になっているが、テレビではいつも時間が足りない感じをうけていた。この本でそういうところを補う徹底解説を読むことができる。おすすめの一冊。