近藤大介著「ほんとうの中国」の感想。

中国に関する本は多数出版されている。その多くは、中国という国家であったり社会そのものを対象としているが、この本はそういったそれを構成する中国人にフォーカスを当てている。

中国人は自分たちとは違うという印象は、多くの日本人が持っているだろう。日本人の常識が通じない人々。よく言えばエネルギッシュであり、悪く言えばおおざっぱでがさつ。彼らがなぜこういった特徴を持っているのかについて、納得のいく答えを本書は示してくれる。

古来、中国という大陸で生活するのは、日本という島国に比べるとはるかに過酷だった。統一国家が興り滅亡し、分裂状態が長く続く。北方からの異民族の侵攻の危機は絶えず、さらに桁違いの人口を抱える。日本のようにある集団に属していれば安心して暮らせるということはない。生き残るために競争社会がつくられていくのは自然なことだ。安住の地は、自分で切り開いて守らなければならなかった。

習近平がしばしば口にする「14億の民を食べさせるのがどれほど大変なことか。」という言葉が象徴的だ。裏を返せば、何をするにも人口の多さが足かせになる。安定を求めるならば、勢い独裁的な政権が生まれやすくなる。民主国家になり、選挙で小党分裂の状態になったらどうするのか。とても選挙など行えない。

軍事力増強は、侵略のためでなく防衛のためだという考えも象徴的だ。とにかくデカい図体を支えるので手一杯な国ということだ。

中国人は何を考え、どう行動するのかを知るためのガイドブックとしてはおすすめのの本だ。