映画「オスロ」(2021)の感想。オスロ合意の裏交渉。

2021年製作のアメリカ映画。1993年のイスラエルとPLOのオスロ合意にまつわる物語。

全くの仲介者であるノルウェー人夫妻の尽力により、イスラエルとPLOの和平が実現する過程が描かれる。ほとんどがノルウェーが用意したゲストハウスが舞台になり、双方の激しい攻防が繰り広げられる。寒々とした雰囲気で交渉が進められ、一触即発といった状況でのやりとりは緊迫感がある。互いに和平への希望はあるが、横たわる溝は大きい。そして忍耐強く障害を克服しながら合意に達する。

こう書くとヒューマニズムに裏打ちされたストーリーのようだが、現実はかなり厳しい。交渉では、先ず互いの憎悪をぶつけようなところから始まる。やや落ち着いたかと思っても、新メンバーが加わると取り付く島もないような状態が再度発生。これを繰り返す。敵対の根本にどうしようもない憎悪があるので、条件だけでは解決できないのが両者の関係だ。イスラエルとPLOの関係改善には、単なる交渉という枠組みだけではくくれない難しさがある。

この映画では、和平反対派については詳しく描かれないが、現実にはそこも大きな問題になる。ラビン、サダトといった指導者たちの暗殺を考えても、交渉者たちがどれほど危険な立場にいるかが想像出来る。

今のガザ紛争にもつながるオスロ合意の舞台裏。力作だ。