原作は松本清張の代表作。昭和33年公開。加藤嘉、南広、山形勲、高峰三枝子出演。
原作を初めて読んだときには、さすがに時代を感じさせるなと思ったものだ。トリックにばかり目が行ったためだが、そこを除けば上質のミステリーだ。この映画も原作同様に、昭和30年代前半という時代背景を踏まえれば、よく出来ていると思う。今のトラベルミステリーにつながるものだし、巨悪の存在も盛り込んでの社会派の要素も取り込んでいる。当時の社会の日常風景も今見れば興味深い。
ミステリーという分野では、この当時の映画はどうしても薄っぺらい印象を受けてしまうのは仕方がない。その後のミステリー隆盛時代が到来するわけで、それに慣れた目で作品を比べられるとやはり分が悪い。それでもこの作品は同じ土俵で比較できるくらいのレベルに仕上がっていると思う。当時のものの中ではダントツの存在だったのではないかな。