大下英治著「最後の無頼派作家 梶山季之」の感想。

梶山季之の本は、代表作の「赤いダイヤ」を読んだことがある。映画では、田宮二郎主演の「黒い試走車」もだいぶ前に観た。どちらもテンポがよく引き込まれるような面白い作品だった。

梶山は、昭和のベストセラー作家から思い浮かべるような生活を送り、45歳という若さでこの世を去った。この本は、そのエネルギッシュな人生の詳細な記録だ。

常人ばなれした執筆量は驚くばかりだ。週刊誌のトップ屋あがりの手法で、次々に発表した作品は世の注目を集めていく。そして酒は欠かせない。更に愛人を持ち、店を持たせる。

何よりも交友関係の広さは桁違いだ。学生時代の友達や同人誌仲間、週刊誌時代の関係者。時代を経るとそれぞれが社会的なポジションを持つようになり、そこからも交流が広がる。作家として原稿用紙に向かうだけでなく、面倒見のよさもあって、社会活動もどきのことも並行して行っている。本当にタフだ。

当然のごとく体をこわすことになる。それでもスピードを緩めることはない。香港で客死するまで走り続けた。

太宰治や三島由紀夫も、作品を投影したような最期をむかえたが、梶山季之も壮絶な終幕だ。