西村京太郎によるミステリー。1977年刊行。
報道カメラマンの野口がたまたま無線による救難信号を受信する。それは太平洋戦争中に沈没した潜水艦からのものであった。野口は仲間とともにその潜水艦について調べ始めると、当時の関係者が事故死してしまう。
潜水艦による金塊の輸送という設定は「D機関情報」と同じだが、ストーリーとしての関連はない。戦時中の事件を現代から捜査するという流れなので、現代青年の自由奔放な生き方と、戦中派の国に命を捧げるといった考えの対比が浮かび上がる。
前半は主に謎解きによる犯人捜しでミステリー調で進む。後半は、犯人を追いつめていく攻防で、アクション映画にしてもいいくらいに手に汗握る場面が連続する。
テンポもいいし、話の展開も広がっていってなかなか面白い。D機関情報と同様に著者の秀作だと思う。