第4シリーズの第3話。
今シリーズの中では一番ミステリーとして楽しめた。謎解きを邪魔しないようなつくりになっていて、純粋に犯人捜しに没頭できる。斬新な演出も健在であるが、裏方に徹しているような扱いで、派手さはないがしっかりと仕事をしているといった位置づけだ。
演出のキーワードは泥。湖からすくいあげた泥で、街全体を覆ってしまったような演出。男たちはすべて泥だらけのような風体で、町全体までも泥の空気感を漂わせる雰囲気。横溝作品特有の、古くからの因襲、旧家のしがらみ、戦争の影、怪奇趣味などが、すべて泥の画面で表現してしまっている。
全体が泥だらけなので、画面では泥は目立つようで目立たなくなる。そういう背景のもとでの金田一耕助の冴えた頭脳での推理と解決。ストーリーと演出のマッチングは最高にうまくいっている。傑作と言っていいエピソードだ。
NHKBS
シリーズ横溝正史短編集IV 池松壮亮×金田一耕助「湖泥」
2025年5月22日 20:30-20:59