映画「リスボン特急」(1972)の感想。アラン・ドロン主演の犯罪映画。

アラン・ドロン主演のフランス犯罪映画。

タイトルにひかれてだいぶ前に観たことがあるが、それほど印象には残らなかった。内容はほぼ忘れてしまったのでもう一度見てみたが、今回も同じような感想だ。リスボン特急というと旅心をくすぐられるが、リスボン特急でなければならない必然性はほぼない。原題は、un flicで警官やデカのこと。

青を基調としたシンプルな色彩はフランス犯罪映画らしく、寒々とした雰囲気が全編に漂っている。冒頭の、閑散とした海辺の銀行を風雨の中襲撃するシーンも引き込まれる。そしてヘリコプターから列車に侵入した犯人が寝間着に着替える場面はとくにいい。詳細な描写で犯罪の臨場感が高まる。

だが、なんとなくしっくりこない。銀行強盗団、麻薬密売団、警察の三者がからみあう展開だが、うまくかみ合っていない。それぞれの関係がぼんやりしていて緊迫感がいまいちだ。カトリーヌ・ドヌーヴも、アラン・ドロンでさえもストーリー的な存在感はいまいち。顔のアップに耐えるだけの表情の演技はさすがだが。

映像は成功しているが、ストーリーがもう少しという作品。それでもかなり楽しめる。