映画「モーリタニアン 黒塗りの記録」(2021)の感想。

9.11同時多発テロ事件の容疑者として長期拘留されたモーリタニア人の手記をもとにした映画。ジョディ・フォスター主演。

米政府によって不当に拘留された容疑者を救う人権派弁護士ナンシーの苦闘を描いたストーリー。そこに軍検察官も加わって、法的な手続きがないがしろにされる現代社会の闇を告発した作品でもある。

法治国家アメリカの根幹を揺るがすようなことがグアンタナモ収容所では行われていたという事実には驚く。拷問や脅迫まがいの取り調べにより、強引に自白に追い込もうとする政府の圧力の存在。9.11がいかにアメリカ社会に衝撃を与えたかがわかるが、それでも今のアメリカで不正まがいの行為が行われていたとは信じられない。

魔女狩りような事態を起こした米政府が非難されるのは当然のことで、結果的には釈放されたのは弁護士側の勝利ということになる。ただ、気になるのは、法の運用の是非についてフォーカスが当たっているが、肝心の被疑者のテロへの関与については、本当のところはわからないままになっていることだ。

もう一点、不利な証拠であっても記録が残っているというは、さすがにアメリカという国家のすごさだと思う。都合の悪いことは記録に残さないというのは、悪事を行うにあたっての初歩だ。黒塗りであれ閲覧拒否であれ、証拠自体は残っているというシステムが存在するアメリカ。さすがに世界最強国だ。