春木育美著「韓国社会の現在」の書評感想。

現代の韓国社会が抱える問題について、詳細に考察した本。

マスコミから流れる韓国のニュースはネガティブなものが多い。日韓関係が悪いことも大きな要因だが、ここ何年も、いつかは韓国社会は息詰まるといった調子の報道が続いている。

一方で、韓国の一人あたりGDPは日本を抜くレベルまで来ているのも事実だ。いったい韓国社会の実像はどんなものかにこの本は答えてくれる。

抱える問題は、日本と同じものが多い。格差と貧困、出生率の低下、女性差別、教育など。様々なデータから、将来の悲観的な将来があぶり出される。韓国の場合、急速な発展をたどったため、日本よりも社会の脆弱性が目立つ。そこに押し寄せるこういった問題が、数字にも表れている。

一方、デジタル、エンタメは、胸を張って成功したと言える分野だ。とくに日本が完全に取り残された社会のデジタル化は、目を見張る者がある。

韓国の急げ、急げの国民性は、拙速と言われることも多いが、デジタルの分野はとくにうまくいった例だろう。

この本では、一部カットされている内容があり、南北問題については触れられていない。既に南北統一が現実的な問題ではなくなっているのも事実かもしれない。

今の韓国を見るうえで、データに基づいた有益な本だと思う。