1972年のミュンヘンオリンピックで起きたテロ事件を描いた作品。
舞台は大会を中継していたアメリカABC現地放送所。映像はほぼすべてがここでのクルーの動きを追ったもので、現場の様子は当時の実際のテレビ映像が挿入されるにとどまる。直接の現場映像を使わず、伝わってくる情報とそれに翻弄されるクルーの動きのみに焦点を絞ってしる。もともと生中継の現場は鉄火場のような雰囲気があると思うが、そこに刻々とテロ事件のニュースが入ってくる。そのため臨場感とスピード感は極限に達する。
人質全員解放の一報が入り安堵したのもつかの間、最悪の結末が伝えられる。誤報を打ったクルーは敗北感を味わうが、放送は続けなければならない。やりきれない思いを感じながらも、ジャーナリストととして仕事を完結させる。
ドイツ人の女性通訳からイスラエルとドイツの微妙な関係、アラブ系クルーからはイスラエルとアラブの関係が見て取れる。またテロ対策が十分でなかった頃の警察の対応も描かれる。そして、事件に影響を与えてしまった生中継のあり方も報道のあり方についての問題も提起している。
実際の悲劇を題材にしているので、この映画が面白いというのは不謹慎かもしれない。それでもやはり作品としてよくできている。テロの悲惨さも十分に伝わってくる。