
葛飾北斎親娘の物語。原作は飯島虚心の「葛飾北斎伝」。長澤まさみ主演。
平日12時からの上映で10人前後の入り。昨年は同じく長澤まさみ主演「スオミの話をしよう」を観たが、ちょっと期待外れだったので、今度はどうかと思いながら鑑賞した。
ストーリーに起伏はない。出戻った応為が北斎とまた暮らし始める。大名からの依頼があったり、弟子の出入りがあったりするが、ごく普通の日常を描くのみ。応為は北斎からも認められるくらいに絵師の才能があったとされるが、親子間で芸術論を戦わせる姿とか技術の伝承の様子などは描かれない。ただ単に外側から親子の生活ぶりをのぞいているだけだ。それが北斎の最期まで続く。
映像はどれも一幅の絵画のようで、江戸の生活を切り取った静止画に見える。北斎の住む部屋のセットは雑然としてよくできているが、やはり同じだ。人が集まる街並みにも、やはり喧騒は感じられない。全体的に静かな映像だ。そこに長澤まさみ演じる応為が登場する。
長澤まさみは大柄の女優だ。この映画では、それを全く隠そうとはしていない。江戸のこぢんまりとした長屋のセットでは、下駄履きの彼女はひときわ目立ってしまう。あえてそうしているかのようだ。小路をゆったりと歩く姿はウルトラマンに出演したときのような巨大さすら感じてしまう。それに加え、絵師としての情熱が表現された場面は少なく、艶めいた色気を感じさせるシーンばかりが目立ってしまう。長澤まさみの魅力を最大限に引き出しているのは確かだが、最後にはやはりこの映画は長澤まさみを見るための作品だったなと思ってしまう。
やはり美女をうまく撮って、作品としても面白く仕上げるのは難しいようだ。ヒッチコックはさすがだったなと改めて思う。

