映画「ビルマの竪琴」(1956)の感想。

昭和の名作。竹山道雄原作、市川崑監督作品。

有名な映画だが、シンプルなストーリー構成になっている。太平洋戦争中に、ビルマ戦線に赴いた日本軍。水島上等兵は、竪琴を操り部隊の団結と作戦遂行にも役立てていた。彼は終戦後も僧としてビルマにとどまり、戦死した兵士たちを弔う道を選ぶ。

反戦映画だが、全体的にソフトな印象を受ける。戦争の悲惨さは、映像では戦死者の遺体で表現されているのみで、激しい戦闘シーンや残虐な行為は描かれていない。精神的なつらさも、主人公の苦悩を外から眺めるような撮られ方で、深くは切り込んでいない。部隊の同僚はいい人ばかりだし、現地の人々は親切で、牧歌的とも言える雰囲気だ。

目を覆いたくなるような映像で戦争の悲惨さをうったえる最近の映画と比べると、かなり柔らかな印象を受ける作品。戦後10年くらいでつくられたものなので、いろんな制約もあり、描き方にも神経を使う必要があったのだと思う。現地の老婆が関西弁をしゃべっているのはご愛敬だ。