映画「ラストエンペラー」(1987)の感想。愛新覚羅溥儀の生涯。

中国清朝最後の皇帝である溥儀の一生を描いた作品。ベルナルド・ベルトルッチ監督、ジョン・ローン主演。

清王朝最後の皇帝溥儀は、幼いながら西太后の意向により皇帝に即位する。しかしすぐに中華民国政府が成立し、退位の追い込まれる。紫禁城に住み皇帝としての生活は維持されたが、その後天津に移り住むことになり、さらに日本の傀儡国家満州の皇帝に即位する。

歴史に翻弄されたラストエンペラーの生涯。ひとりの人間が皇帝から一般人になったわけだが、その間の人としての苦悩であるとか、皇后との夫婦愛とかを深く掘り下げるのではない。主軸はあくまで時代を追っての溥儀の客観的な描写が中心になる。

一番感じるのは、はかりしれない皇帝の権力の大きさだ。終始、溥儀の周りに人を配置することで、その巨大さを映像を使って表現している。紫禁城内では皇帝にひれ伏す大勢の人々。武装して溥儀を囲む国民党の兵士たち。天津では上流階級の一員になった姿。満州では日本軍のとりまきがいて、戦犯となってからは囚人たちのひとりになる。そして最後は市民のひとりとして文化大革命の騒乱の中にたたずむ姿。

常に溥儀のまわりには人がいる。しかし、その中での立場が、権力を失うにつれて徐々に変わっていく。かっての威光が消え去っていく姿は残酷だし、それだからこそ本来皇帝の持つ権力の大きさが伝わる。

それから映像がきれいだ。紫禁城の華麗さは目を見張るばかり。荘厳な映像美だが、色彩はくすんだ色が使われていて、落日の王朝のはかなさが表現されている。

歴史の流れの中で最後の皇帝を描いた傑作。